福岡地方裁判所 昭和54年(行ウ)14号 判決 1982年9月24日
北九州市小倉北区妙見一の二〇
原告
平野耕治
右訴訟代理人弁護士
元村和安
北九州市小倉北区萩崎町一番一〇号
被告
小倉税務署長
脇山一郎
右指定代理人
有本恒夫
同
北島凡夫
同
田中秀昭
同
深松智
主文
原告の請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告が昭和五一年三月九日付でなした原告に対する昭和四五年分以降の青色申告承認取消処分(以下、本件青色取消処分という。)を取消す。
2 被告が昭和五一年三月一〇日付でなした原告に対する昭和四五年分ないし同四七年分各所得税についての各更正処分(以下、本件更正処分という。)並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課処分(以下、本件賦課処分という。)をいずれも取消す。
3 訴訟費用は被告の負担とする。
二 請求の趣旨に対する答弁
主文同旨
第二当事者の主張
一 請求原因
1 原告は、被告から、所得税について青色申告の承認を受けていたところ、被告は、原告に対し、本件青色取消処分をなした。
2 原告は、被告に対し、昭和四五年分ないし同四七年分各所得税について別表一(課税処分表)の確定申告額及び修正申告額各欄記載のとおりの各申立並びに昭和四五年分所得税についての更正請求をなしたところ、被告は、原告に対し、昭和四五年分所得税について同表の更正請求による更正額欄記載のとおりの更正処分をなし、更に、同表の更正額欄記載のとおりの本件更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税各欄記載のとおりの本件賦課処分をなした。
3 原告は、本件各処分に係る事項に関する調査が福岡国税局職員によってなされた旨の記載がある書面により本件各処分の通知を受けたため、これを不服として、昭和五一年四月三〇日、福岡国税局長に対し、異議申立をなしたところ、同局長は、同年七月二八日付でこれを棄却する旨の決定をなしたので、更に、原告は、同年八月二五日、国税不服審判所長に対し、審査請求をなしたところ、同所長は、昭和五四年三月二八日付でこれを棄却する旨の裁決をなした。
4 しかしながら、原告には所得税法第一五〇条第一項各号に該当する事由が存しないから、本件青色取消処分は違法であるし、更に、原告の事業所得は各年分の申告額を超えないものであるから、本件更正処分及び賦課処分も違法であり、従って、本件各処分はいずれも取消されるべきである。
二 請求原因に対する認否
請求原因1ないし3の各事実は全て認める。
三 抗弁
1 本件青色取消処分の適法性
(一) 協和銀行北九州支店において、次のとおりの預金取引が行われていた。
(1) 昭和四一年一〇月二六日に開設された田島耕造名義の普通預金口座(口座番号一六三八五)は、同四三年二月一三日に解約されているが、同四二年九月一二日に、この預金額から、二〇〇万円が引出され、同日に開設された田島耕造名義の定期預金(口座番号一〇九一八)二〇〇万円に入金されている。
(2) 昭和四三年二月一六日に開設された須田栄子名義の普通預金口座(口座番号一八六一一)は、同四五年一月二〇日に解約されているが、同四四年三月二七日に、この預金額から五〇万円が引出され、同日に開設された宮永実名義の定期預金(口座番号一一九七六)一五〇万円の一部として入金されている。
また、この普通預金口座の解約時の預金残高一万一九三〇円は、同四五年一月二〇日に開設された池田春子名義の普通預金口座(口座番号二二五五〇)に入金されている。
(3) 昭和四四年一二月一九日に開設された池田大作名義の普通預金口座(口座番号二二四一九)は、同四五年一月二〇日に解約されているが、解約時の預金残高一六万九六八四円は、同日に開設された池田春子名義の普通預金口座(口座番号二二五五〇)に入金されている。
(4) 昭和四五年一月二〇日に開設された池田春子名義の普通預金口座(口座番号二二五五〇)は、同四六年一月一一日に解約されているが、同四五年二月一六日に、この預金額から一〇〇万円が引出され、同日に開設された同人名義の定期預金(口座番号一六五八五)一〇〇万円に入金されている。
また、同四五年三月一六日一〇〇万円が引出され、同年三月一七日に開設された朝倉義一名義の定期預金(口座番号一六七三〇)一〇〇万円に入金されている。
(5) 昭和四六年一月一一日に開設された岡研次名義の普通預金口座(口座番号二四三一三)は、同四六年一〇月四日に解約されているが、同四六年三月一五日に、この預金額から一〇〇万円が引出され、同日に開設された池田春子名義の定期預金(口座番号二一〇四七)一〇〇万円に入金されている。
また、同四六年四月一六日に一〇〇万円が引出され、同日に開設された岡研次名義の定期預金(口座番号二一二三九)一〇〇万円に入金されている。同じく、同四六年五月一二日一〇〇万円が引出され、同日に開設された田島一夫名義の定期預金(口座番号二一三七〇)一〇〇万円に入金されている。
さらに、同四六年九月二七日に一〇〇万円が引出され、同日に開設された金子茂人名義の定期預金(口座番号二二二五八)一〇〇万円に入金されている。
なお、同四六年四月九日の当該普通預金口座の入金額四一万六六八四円は、柴田恵江(原告の義妹)名義の定期預金(口座番号一六八七六)を解約した元金三〇万円と、その利息一万六六八四円及び現金一〇万円が入金されたものである。
(6) 昭和四六年一〇月四日に開設された大内練一郎名義の普通預金口座(口座番号二五七一二)は、同四七年九月一四日に解約されているが、同四七年五月一一日に、この預金額から一〇〇万円が引出され、同日に開設された宮永洋子名義の定期預金(口座番号二三〇七四)一〇〇万円に入金されている。
また、同四七年六月一五日に一〇〇万円が引出され、同日に開設された田島正夫名義の定期預金(口座番号一七五四八)二二二万六〇五一円の一部として入金されている。
(二) 住友銀行北九州支店において、次のとおりの取引が行われていた。
(1) 昭和四七年九月一四日開設された朝倉葉子名義の普通預金口座(口座番号八〇七四九)は、同四八年二月八日に解約されている。
(2) 昭和四七年九月一四日に開設された菊池和子名義の普通預金口座(口座番号八〇七九九)は、同四七年九月二五日に解約されているが、解約時の預金残高二九八円は、前記(1)の朝倉葉子名義の普通預金口座(口座番号八〇七四九)に入金されている。
(三) 前記(一)及び(二)の各預金口座(以下、本件仮名預金という。)は、次のとおり相互に関連があり、同一人に帰属すると判断される。
(1) 前記(一)(1)の田島耕造名義の定期預金、同(5)の田島一夫名義の定期預金及び同(6)の田島正夫名義の定期預金に使用された印章は同一のものである。
(2) 前記(一)(2)の宮永名義の定期預金及び同(6)の宮永洋子名義の定期預金に使用された印章は同一のものである。
(3) 前記(一)(4)の池田春子名義の定期預金及び同(5)の池田春子名義の定期預金に使用された印章は同一のものである。
(4) 前記(一)(4)の朝倉義一名義の定期預金及び前記(二)(1)の朝倉葉子名義の普通預金に使用された印章は同一のものである。
(四) 本件仮名預金は、次のとおり原告に帰属すると判断される。
(1) 昭和四八年五月九日から同月一一日までの間、協和銀行北九州支店の次長が保存していた「預金管理表」の「耕治」の表示をしている個所に、原告の名前のほかに、前記(一)(2)の宮永実、同(4)の池田春子と朝倉義一、同(5)の柴田恵江及び同(6)の田島正夫の名前が記載されていた。
(2) 昭和五一年六月九日当時、協和銀行北九州支店が保存していた「定期預金大口書抜帳」に前記(一)(5)の岡研次及び金子茂人名義の定期預金が「耕治」又は「こうじ」と表示されたていた。
(3) 原告の実兄平野弘は、昭和四七年一二月六日、前記(二)(1)の朝倉葉子名義の普通預金口座に、梶川波津子名義で国民相互銀行原宿支店を通じて一〇〇万円を送金しているが、昭和四八年一月九日及び同年二月二日付の右預金請求書の出納番号札欄に「平のさん」の記載があった。
(4) 前記(一)(5)の岡研次名義の普通預金の昭和四六年一月一一日から同年一〇月四日までの入金は、累計一〇五〇万三二四九円であり、同(5)の柴田恵江名義の定期預金が、昭和四六年四月九日に解約されて右岡研次名義の普通預金に入金されているが、右柴田恵江は、原告の義妹かつ事業専従者であり、その専従者給与額は、昭和四五年において一七万七五〇〇円、同四六年において六〇万六〇〇〇円、同四七年において八四万円であり、それ以外の収入はない。
よって、右岡研次名義の普通預金額は、右柴田恵江の収入額に比すると巨額であるから、その関連預金は原告に帰属するものである。
(五) 本件仮名預金は、次のとおり原告の事業に係るものであると判断できる。
(1) 本件仮名預金は、反覆的に相当まとまった金額が入出金されている。
よって、本件仮名預金は、浮動的営業資金をプールしたものであると推認できる。
(2) 原告の家庭は五人家族で、原告の事業収入以外の収入は、別表二(事業外収入表)(1)記載のとおりであり、原告の妻敏子の収入は、同表(2)記載のとおりであるが、本件仮名預金の入金状況は、別表三(仮名普通預金入金表)(1)ないし(3)の各<1>、<4>、<7>欄記載のとおりである。
よって、本件仮名預金は、その入金額に照らし、原告の事業収入を資金源とするものである。
(3) 原告の営業は、現金売上げを主体とするものである。
よって、原告が、売上金の一部を除外することは容易である。
(六) 原告は、次のとおり本件仮名預金を備付帳簿及び決算書類に記載せずに確定申告書を提出しているから、所得税法第一五〇条第一項第三号に該当し、従って、本件青色取消処分は適法である。
(1) 原告の昭和四五年分の帳簿書類は、昭和四六年五月二三日の島町食堂街の火災の際焼失したとして提示がないが、被告職員による原告の昭和四四年分所得税調査の際、原告は、昭和四四年末すなわち同四五年始め現在の預金残高証明書を提出しているところ、、本件仮名預金のうち同日現在に残高のある前記(一)(2)の須田栄子名義の普通預金(口座番号一八六一一)、同(2)の宮永実名義の定期預金(口座番号一一九七六)及び同(3)の池田大作名義の普通預金(口座番号二二四一九)についての預金残高証明書を提出していない。
よって、右仮名預金が法定の備付帳簿及び決算書類に記載されていなかったため、その預金残高証明書を提出しなかったものと推認できる。
(2) 原告が昭和四六年三月一三日被告に提出した昭和四五年分所得税確定申告書に添付されている決算書の貸借対照表には、本件仮名預金のうち昭和四五年末現在に残高のある前記(一)(2)の池田春子名義の普通預金(口座番号二二五五〇)、同(5)の柴田恵江名義の定期預金(口座番号一六八七六)、同(4)の池田春子名義の定期預金(口座番号一六五八五)及び同(4)の朝倉義一名義の定期預金(口座番号一六七三〇)について記載がない。
(3) 原告は、昭和四六年分備付帳簿に、本件仮名預金のうち昭和四六年始めに残高のある前記(一)(2)の池田春子名義の普通預金(口座番号二二五五〇)、同(5)の柴田恵江名義の定期預金(口座番号一六八七六)、同(4)の池田春子名義の定期預金(口座番号一六五八五)及び同(4)の朝倉義一名義の定期預金(口座番号一六七三〇)について記載せず、同年中の右仮名預金の入出金についても記載していない。
(4) 原告は、昭和四七年分備付帳簿に、本件仮名預金のうち昭和四七年始めに残高のある前記(一)(6)の大内練一郎名義の普通預金(口座番号二五七一二)、同(5)の池田春子名義の定期預金(口座番号二一〇四七)、同(5)の岡研次名義の定期預金(口座番号二一二三九)、同(5)の田島一夫名義の定期預金(口座番号二一三七〇)及び同(5)の金子茂人名義の定期預金(口座番号二二二五八)について記載せず、同年中の右仮名預金の入出金についても記載していない。
2 本件更正処分の適法性
(一) 原告の昭和四五年分の事業所得の額は、次のとおりである。
(1) 売上金額
<1> 昭和四五年における本件仮名普通預金の入金額は、別表三(仮名普通預金入金表)(1)の<1>、<4>、<7>各欄記載のとおりであり、その年間合計は一一一九万四四三二円である。
<2> 右<1>の入金額のうち、原告の営業収入金に関係がないと認められるものは、同表(1)の<2>、<5>、<8>各欄記載のとおりであり、その年間合計は三七四万四二三二円である。
以上によれば、原告が被告に提出した昭和四五年分所得税青色申告決算書(以下、決算書という。)に計上されなかった売上金額は、同表(1)の<3>、<6>、<9>各欄記載のとおりであり、その年間合計は、同表(1)の<10>欄(別表五(1)の<2>欄)記載のとおり七四五万〇二〇〇円である。
<3> 原告が昭和四五年分決算書に計上した売上金額(但し、家事消費等及び雑収入を含む。)は、別表五(被告主張の月末在庫高計算表)(1)の<1>欄記載のとおりであり、その年間合計は三五八八万六七六八円である。
以上によれば、昭和四五年分の売上金額は、同表(1)の<3>欄記載のとおり四三三三万六九六八円である。
(2) 売上原価
<1> 昭和四五年における本件仮名普通預金の出金額は、別表四(仮名普通預金出金表)(1)の<1>、<4>、<7>各欄記載のとおりであり、その年間合計は一〇〇六万五一二五円である。
<2> 右<1>の出金額のうち、原告の仕入取引に関係がないと認められるものは、同表(1)の<2>、<5>、<8>各欄記載のとおりであり、その年間合計は七一〇万七一二五円である。
以上によれば、昭和四五年分決算書に計上されなかった仕入金額は、同表(1)の<3>、<6>、<9>各欄記載のとおりであり、その年間合計は、同表(1)の<10>欄(別表五(1)の<5>欄)記載のとおり二九四万八〇〇〇円である。
<3> 原告が昭和四五年分決算書に計上した仕入金額は、別表五(1)の<4>欄記載のとおりであり、その年間合計は一四七五万五〇四二円である。
以上によれば、昭和四五年分の仕入金額は、同表(1)の<6>欄(但し、月別仕入金額は後記2(四)の計算によるものである。)記載のとおり一七七〇万三〇四二円である。
<4> 原告が昭和四五年分決算書に計上した期首商品たな卸高は二五万八九〇〇円、期末商品たな卸高は四一万〇六七〇円である。
以上によれば、昭和四五年分の売上原価は、次のとおり一七五五万一二七一円である。
期首商品たな卸高+仕入金額-期末商品たな卸高
=258,900+17,703,042-410,610=17,551,271
(3) 経費
<1> 原告が昭和四五年分決算書に計上した経費の合計額は一七八九万一五五〇円である。
<2> 右<1>の経費のうち、石油ストーブ、消火器及びテーブルの減価償却費の計算誤りによる償却不足額は五九二四円である。
<3> 原告の事業専従者は平野敏子外二名であり、その必要経費は四五万円である。
以上によれば、昭和四五年分の経費は、次のとおり一八三四万七四七四円である。
17,891,550+5,924+450,000=18,347,474
以上の結果、原告の昭和四五年分事業所得は、次のとおり七四三万八二二三円である。
売上金額-(売上原価+経費)
=43,336,968-(17,551,271+18,347,474)=7,438,223
(二) 原告の昭和四六年分の事業所得の額は、次のとおりである。
(1) 売上金額
<1> 昭和四六年における本件仮名普通預金の入金額は、別表三(2)の<1>、<4>、<7>各欄記載のとおりであり、その年間合計は一四九三万九九七六円である。
<2> 右<1>の入金額のうち、原告の営業収入金に関係がないと認められるものは、同表(2)の<2>、<5>、<8>各欄記載のとおりであり、その年間合計は五三七万四九七六円である。
以上によれば、昭和四六年分決算書に計上されなかった売上金額は、同表(2)の<3>、<6>、<9>各欄記載のとおりであり、その年間合計は、同表(2)の<10>欄(別表五(2)の<2>欄)記載のとおり九五六万五〇〇〇円である。
<3> 原告が昭和四六年分決算書に計上した売上金額(但し、家事消費等及び雑収入を含む。)は、別表五(2)の<1>欄記載のとおりであり、その年間合計は四三二八万五三四七円である。
以上によれば、昭和四六年分の売上金額は、同表(2)の<3>欄記載のとおり五二八五万〇三四七円である。
(2) 昭和四六年における本件仮名普通預金の出金額は別表四(2)の<1>、<4>、<7>各欄記載のとおりであり、その年間合計は一六一〇万八三八三円である。
<1> 右<1>の出金額のうち、原告の仕入取引に関係がないと認められるものは、同表(2)の<2>、<5>、<8>各欄記載のとおりであり、その年間合計は一二一五万円である。
以上によれば、昭和四六年分決算書に計上されなかった仕入金額は、同表(2)の<3>、<6>、<9>各欄記載のとおりであり、その年間合計は、同表(2)の<10>欄(別表五(2)の<5>欄)記載のとおり三九五万八三八三円である。
<3> 原告が昭和四六年分決算書に計上した仕入金額は、別表五(2)の<4>欄記載のとおりであり、その年間合計は一八二九万三五九一円である。
以上によれば、昭和四六年分の仕入金額は、同表(2)の<6>欄(但し、月別仕入金額は後記2(四)の計算によるものである。)記載のとおり二二二五万一九七四円である。
<4> 原告が昭和四六年分所得税修正申告に係る決算書(以下、修正決算書という。)に計上した期首商品たな卸高は四一万〇六七一円、期末商品たな卸高は三二万七六一八円である。
以上によれば、昭和四六年分の売上原価は、次のとおり二二三三万五〇二七円である。
期首商品たな卸高+仕入金額-期末商品たな卸高
=410,671+22,251,974-327,618=22,335,027
(3) 経費
<1> 原告が昭和四六年分修正決算書に計上した経費の合計額は二二一九万一八一五円である。
<2> 原告の事業専従者は柴田恵江であり、その必要経費は一六万五〇〇〇円である。
以上によれば、昭和四六年分の経費は、次のとおり二二三五万六八一五円である。
22,191,815+165,000=22,356,815
以上の結果、原告の昭和四六年分事業所得は、次のとおり八一五万八五〇五円である。
売上金額-(売上原価+経費)
=52,850,347-(22,335,027+22,356,815)=8,158,505
(三) 原告の昭和四七年分の事業所得の額は、次のとおりである。
(1) 売上金額
<1> 昭和四七年における本件仮名普通預金の入金額は、別表三(3)の<1>、<4>、<7>各欄記載のとおりであり、その年間合計は二二一一万六一一一円である。
<2> 右<1>の入金額のうち、原告の営業収入金に関係がないと認められるものは、同表(3)の<2>、<5>、<8>各欄記載のとおりであり、その年間合計は一一三七万四一一一円である。
以上によれば、昭和四七年分決算書に計上されなかった売上金額は、同表(3)の<3>、<6>、<9>各欄記載のとおりであり、その年間合計は、同表(3)の<10>欄(別表五(3)の<2>欄)記載のとおり一〇七四万二〇〇〇円である。
<3> 原告が昭和四七年分決算書に計上した売上金額(但し、家事消費等及び雑収入を含む。)は、別表五(3)の<1>欄記載のとおりであり、その年間合計は四四四〇万四五〇一円である。
以上によれば、昭和四七年分の売上金額は、同表(3)の<3>欄記載のとおり五五一四万六五〇一円である。
(2) 売上原価
<1> 昭和四七年における本件仮名普通預金の出金額は、別表四(3)の<1>、<4>、<7>各欄記載のとおりであり、その年間合計は一八四五万五八一三円である。
<2> 右<1>の出金額のうち原告仕入取引に関係がないと認められるものは、同表(3)の<2>、<5>、<8>各欄記載のとおりであり、その年間合計は一三九六万〇八一三円である。
以上によれば、昭和四七年分決算書に計上されなかった仕入金額は、同表(3)の<3>、<6>、<9>各欄記載のとおりであり、その年間合計は、同表(3)の<10>欄(別表五(3)の<5>欄)記載のとおり四四六万五〇〇〇円である。
<3> 原告が昭和四七年分決算書に計上した仕入金額は、別表五(3)の<4>欄記載のとおりであり、その年間合計は一八一五万五五〇五円である。
以上によれば、昭和四七年分の仕入金額は、同表(3)の<6>欄(但し、月別仕入金額は後記2(四)の計算によるものである。)記載のとおり二二六二万〇五〇五円である。
<4> 原告が昭和四七年分決算書に計上した期首商品たな卸高は三二万七六一八円、期末商品たな卸高は三六万三三四三円である。
以上によれば、昭和四七年分の売上原価は、次のとおり二二五八万四七八〇円である。
期首商品たな卸高+仕入金額-期末商品たな卸高
=327,618+22,620,505-363,343=22,584,780
(3) 経費
<1> 原告が昭和四七年分決算書に計上した経費の合計額は二二八六万六五八〇円である。
<2> 右<1>の経費のうち、減価償却費の計算誤りによる償却不足額は、照明器具につき五〇五五円、建物(店舗改造)につき四万二六六〇円で、右償却超過額は、車輌につき八七九三円、石油ストーブ、消火器、テーブルにつき二五五七円である。
<3> 原告の事業専従者は柴田恵江であり、その必要経費は一七万円である。
以上によれば、昭和四七年分の経費は、次のとおり二三〇七万二九四五円である。
22,866,580-11,350+5,055+42,660+170,000=23,072,945
以上の結果、原告の昭和四七年分事業所得は、次のとおり九四八万八七七六円である。
売上金額-(売上原価+経費)
=55,146,501-(22,584,780+23,072,945)=9,488,776
(四) なお、材料在庫高の受払計算は、物のみの受払いによってなされるものであり、必ずしも金銭の出納計算と一致するものではないから、本件仮名普通預金の月別出金額をもって直ちに該月の材料入荷高とみなすことは不当であり、強いて、原告の営業の月末在庫高を算出するとすれば、次の方式によることが相当であり、これによれば、被告主張の売上金額を前提としても右月末在庫高に余剰が生じるのであるから、後記原告の推計課税の合理性に対する主張は失当である。
(1) 前記2(一)ないし(三)で算出した数値を次式に代入して昭和四五年ないし同四七年における原告の営業の原価率Aを求めると、次のとおりとなる。
<省略>
<1> 昭和四五年 〇・三九五六九五〇
<2> 昭和四六年 〇・四一三八四〇三
<3> 昭和四七年 〇・四一五六五八一
(2) 右の数値、原価率A及び後記原告主張の原価率Bを用いて月別在庫高を算出すると別表五(被告主張の月別在庫高計算表)(1)ないし(3)の各<9>欄記載のとおりとなる。
3 本件賦課処分の適法性
(一) 別表七(加算税計算表)の<3>欄記載の税額の計算の基礎となった事実のうちに、その更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて正当な理由があると認められるものは存しない。
(二) 同表の<7>欄記載の金額については、所得金額の計算の基礎となるべき事実を隠ぺいしたところによって確定申告書を提出している。
よって、国税通則法第六五条、第六八条を適用して算出した重加算税及び過少申告加算税は同表<16>及び<17>欄記載のとおりであるから、本件賦課処分は適法である。
四 抗弁に対する認否
1 抗弁1の事実について
(一) 同(一)ないし(五)の各事実は不知。
(二) 同(六)の各事実は争う。
なお、原告の昭和四五年分の帳簿書類は、昭和四六年五月二三日の火災により焼失している。
2 抗弁2の事実について
(一) 同(一)の事実のうち、同(1)の<3>、同(2)の<3>、<4>、同(3)の<1>の各事実は認め、その余の事実は否認。
(二) 同(二)の事実のうち、同(1)の<3>、同(2)の<3>、<4>、同(3)の<1>の各事実は認め、その余の事実は否認。
(三) 同(三)の事実のうち、同(1)の<3>、同(2)の<3>、<4>、同(3)の<1>の各事実は認め、その余の事実は否認。
(四) 同(四)の主張は争う。
(1) 被告主張の基礎数値を次式に代入し、昭和四五年ないし同四七年における原告の営業の原価率Bを算出すると、次のとおりとなる。
<省略>
<1> 昭和四五年 〇・四〇五
<2> 昭和四六年 〇・四二三
<3> 昭和四七年 〇・四一〇
(2) 被告主張の基礎数値と右原価率Bを用いて、昭和四五年ないし同四七年における原告の営業の月別在庫高を算出すると、別表六(1)ないし(3)の各<9>欄記載のとおりとなる。
よって、右月末在庫高が負となる部分については、これに対応する売上金額が発生するはずがないというべきであるから、被告主張の売上金額は過大であり、その推計方法は不合理である。
3 抗弁3の各事実は否認する。
五 再抗弁
原告は、偽りその他不正の行為により税額を免れたことはないので、国税通則法第七〇条第一項により、その更正期間は三年であるから、右期間経過後になされた本件更正処分及び賦課処分は違法である。
六 再抗弁に対する認否
否認する。
第三証拠
一 原告
1 甲第一ないし第二五号証、第二六号証の一、二、第二七、第二八号証、第二九ないし第三一号証の各一、二、第三二、第三三号証、第三四、偽三五号証の各一、二、第三六号証、第三七、第三八号証の各一、二、第三九号証、第四〇、第四一号証の各一、二、第四二号証、第四三、第四四号証の各一、二、第四五ないし第四九号証、第五〇号証の一、二、第五一、第五二号証、第五三号証の一、二、第五四号証、第五五号証の一、二、第五六、第五七号証、第五八号証の一、二、第五九号証、第六〇号証の一、二、第六一号証、第六二ないし第六四号証の各一、二、第六五、第六六号証、第六七号証の一、二、第六八号証、第六九号証の一、二、第七〇号証、第七一号証の一ないし五、第七二号証の一、二、第七三号証、第七四ないし第七七号証の各一、二、第七八、第七九号証
2 原告本人
3 乙第一ないし第三号証のうち、各書き込み部分の成立は不知、その余の各部分の成立は認め、第三六、第四〇ないし第四二号証の成立は認め、その余の乙号各証の成立は全て不知。
二 被告
1 乙第一ないし第八号証、第九号証の一、二、第一〇ないし第二八号証、第二九ないし第三四号証の各一、二、第三五ないし第四二号証
2 証人戸田信次、同中園篤、同佐藤治彦
3 甲第二六号証の一のうち、二枚目末尾の書き込み部分の成立(原本の存在及び成立を含む。)は不知、その余の部分の成立(右同)は認め、第五四号証のうち、八枚目「判決要旨」と題する部分の成立(右同)は不知、その余の部分の成立(右同)は認め、第七九号証の成立(右同)は不知、その余の甲号各証の成立(右同)は全て認める。
理由
一 請求原因1ないし3の各事実(本件青色取消処分、更正処分及び賦課処分並びに不服申立の経緯)は、全て当事者間に争いがない。
二 そこで、抗弁1(本件青色取消処分の適法性)について判断する。
1 同(一)の事実(協和銀行北九州支店における取引)について
(一) 同(1)の事実(田島耕造名義の預金取引)は、証人戸田信次の証言により真正に成立したものと認められる乙第二七号証、証人中園篤の証言により真正に成立したものと認められる乙第二六、第二八、第三九号証、右両名の各証言によれば、これを認めることができる。
(二) 同(2)の事実(須田栄子、宮永実及び池田春子名義の預金取引)は、前掲中園の証言により真正に成立したものと認められる乙第一二、第一四、第二二号証、前掲乙第三九号証、同証言によれば、これを認めることができる。
(三) 同(3)の事実(池田大作及び池田春子名義の預金取引)は、前掲中園の証言により真正に成立したものと認められる乙第一三号証、前掲乙第一四号証、同証言によれば、これを認めることができる。
(四) 同(4)の事実(池田春子及び朝倉義一名義の預金取引)は、前掲乙第一四、第三九号証、前掲中園の証言により真正に成立したものと認められる乙第二三、第二四号証、同証言によれば、これを認めることができる。
(五) 同(5)の事実(岡研次、池田春子、田島一夫、金子茂人及び柴田恵江名義の預金取引)は、前掲中園の証言により真正に成立したものと認められる乙第一五、第二〇、第二五号証、前掲乙第三九号証、同証言によれば、これを認めることができる。
(六) 同(6)の事実(大内練一郎、宮永洋子及び田島正夫名義の預金取引)は、前掲中園の証言により真正に成立したものと認められる乙第一六、第一九、第三七、第三八号証、前掲乙第三九号証、同証言によれば、これを認めることができる。
2 同(二)の事実(住友銀行北九州支店における取引)について
(一) 同(1)の事実(朝倉葉子名義の預金取引)は、前掲中園の証言により真正に成立したものと認められる乙第一七号証、同証言によれば、これを認めることができる。
(二) 同(2)の事実(菊池和子存び朝倉葉子名義の預金取引)は、前掲乙第一七号証、前掲中園の証言により真正に成立したものと認められる乙第一八号証、同証言によれば、これを認めることができる。
3 同(三)の事実(本件仮名預金の関連性)について
(一) 同(1)の事実(田島耕造、田島一夫及び田島正夫名義の預金に使用された印章)は、前掲乙第一九、第二〇、第二六、第二八号証によれば、これを認めることができる。
(二) 同(2)の事実(宮永実及び宮永洋子名義の預金に使用された印章)は、前掲中園の証言により真正に成立したものと認められる乙第二一号証、前掲乙第二二号証によれば、これを認めることができる。
(三) 同(3)の事実(池田春子名義の預金に使用された印章)は、前掲乙第二四、第二五号証によれば、これを認めることができる。
(四) 同(4)の事実(朝倉義一及び朝倉葉子名義の預金に使用された印章)は、前掲戸田の証言により真正に成立したものと認められる乙第九号証の一、前掲乙第二三号証によれば、これを認めることができる。
4 同(四)の事実(仮名預金の原告帰属性)について
(一) 同(1)の事実(預金管理表の記載)は、証人佐藤治彦の証言により真正に成立したものと認められる乙第七号証、同証言によれば、これを認めることができる。
(二) 同(2)の事実(定期預金大口書抜帳の記載)は、前掲戸田の証言により真正に成立したものと認められる乙第八号証、同証言によれば、これを認めることができる。
(三) 同(3)の事実(朝倉葉子名義の預金の請求書の記載等)は、前掲乙第九号証の一、第一七号証、前掲中園の証言により真正に成立したものと認められる乙第九号証の二、第一〇、第一一号証、同証言によれば、これを認めることができる。
(四) 同(4)の事実(柴田恵江の収入等)は、成立に争いのない乙第一ないし第三号証(但し、いずれも書き込み部分を除く。)、前掲乙第一五、第三九号証によれば、これを認めることができる。
5 右1ないし4の諸事情をかれこれ総合すれば、本件仮名預金は原告に帰属すると認めるのが相当であり、原告本人尋問の結果中には、銀行員の調査によれば本件仮名預金は同姓の平野せいじのものであった旨の部分が存するが、右認定の経緯に照らし、たやすく信用できない。
6 同(五)の事実(本件仮名預金の事業関連性)について
(一) 同(1)の事実(本件仮名預金の入出金状況)は、前掲乙第一二ないし第一八号証、戸田の証言によれば、これを認めることができる。
(二) 同(2)の事実(原告らの事業外収入及び本件仮名普通預金の入金状況)は、前掲乙第一ないし第三号証、第一二ないし第一八号証、成立に争いのない乙第四〇ないし第四二号証、成立(原本の存在及びその成立を含む。)に争いのない甲第七八号証と弁論の全趣旨によれば、これを認めることができる。
(三) 同(3)の事実(原告の営業形態)は、原告本人尋問の結果によれば、これを認めることができる。以上の諸事情をかれこれ総合すれば、本件仮名預金が原告の事業に係るものであることが認められる。
7 同(六)の事実(預金取引の記帳状況)について
(一) 同(1)の事実(原告の昭和四四年末の預金残高証明書の記載等)は、前掲戸田の証言により真正に成立したものと認められる乙第六号証、前掲乙第一二、第一三、第三九号証、同証言によれば、これを認めることができる。
(二) 同(2)の事実(原告の昭和四五年分確定申告書の記載等)は、前掲乙第一、第一四、第三九号証、戸田の証言によれば、これを認めることができる。
(三) 同(3)の事実(原告の昭和四六年分備付帳簿の記載等)は、前掲乙第二、第一四、第三九号証、戸田の証言によれば、これを認めることができる。
(四) 同(4)の事実(原告の昭和四七年分備付帳簿の記載等)は、前掲乙第三、第一六、第三九号証、戸田の証言によれば、これを認めることができる。
以上の事実を総合すれば、原告が昭和四五年分の備付帳簿及び決算書類に本件仮名預金を隠ぺいして記載していたことが認められるから、所得税法第一五〇条第一項第三号により、被告が昭和四五年までさかのぼって本件青色取消処分をなしたのは適法であるというべきである。
三 次に、抗弁2(本件更正処分の適法性)について判断するに、被告は、本件更正処分における原告の事業所得を認定するために、原告に帰属する本件仮名預金の入出金の状況等の間接的な資料を用いているのであるから、右認定の方法は、所得税法第一五六条所定の推計課税であるというべきであるが、前記認定の本件仮名普通預金の記帳状況に照らせば、原告の備付帳簿等の資料の内容が不正確で信用できないというべきであるから、本件更正処分につき推計課税の必要性を認めることができる。
進んで、推計課税の合理性について判断するに、被告は、原告の事業所得の算出につき、原告の本件仮名普通預金の入金額から売上金でないと認定した入金額を控除したものを売上金額、その出金額から仕入金でないと認定した出金額を控除したものを仕入金額とする方法を主張しているのであるが、一般に商人の利用する預金の資金源は、売上金ないしこれから生じた差益利得による度合が大であり、しかも、売上金の記帳がその一部についてしかなされないときは、記帳された売上金は帳簿に記載された預金に、簿外の売上金は簿外預金にそれぞれ結びつき易い道理であるし、また、営業に関連する預金の入出金の性質は、商人において比較的正確に把握しているはずであるから、被告課税庁において簿外預金の入出金中の相当程度の金額についてその根拠を立証したならば、残余の金員の性質については原告納税者においてその入出金の経過ないし根拠を明らかにしない限り、これを事業所得の算出の基礎とすることが相当であるというべきであり、従って、右見地に立脚する被告主張の推計方法は合理的であるということができる。
しかるに、原告は、右推計方法によって算出された数値を用いて原告の営業の月別材料在庫高を算出すると、これが負となる月が生じるのにもかかわらず、該月に売上金額が発生することになるから、右推計方法は不合理であると主張するので、この点について判断するに、原告は、本件仮名普通預金の月別出金額をもって該月の材料入荷高とみなすことを前提として月別材料在庫高を算出しているのであるが、一般の取引通念に照らせば、材料在庫高の受払計算は物のみの受払いによってなされるものであり、必ずしも仕入代金の出納計算と一致するものではないことが明らかであるから、右の擬制を前提とする原告の主張は失当というべきであるし、翻って、後記認定の売上金額と仕入金額との月別の期間的対応関係を考慮しながら月別仕入金額を算出し、これを基礎として月別材料在庫高を求めると、被告主張の別表五(1)ないし(3)の各<9>欄記載の数値が導かれるのであって、原告の主張する不合理な結果は生じないのであるから、右推計方法を不当ということはできない。
そこで、右推計方法を用いて原告の事業所得を算出すると、以下のとおりとなる。
1 抗弁2(一)の事実(昭和四五年分事業所得の推計額)について
(一) 同(1)の事実(売上金額)について
(1) 同<1>の事実(昭和四五年分仮名普通預金入金額)は、前掲乙第一二ないし第一四号証、前掲戸田の証言により真正に成立したものと認められる乙第二九号証の一、同証言によれば、これを認めることができる。
(2) 同<2>の事実(入金額中、営業収入金に関係がないもの)は、前掲乙第一二ないし第一四号証、前掲戸田の証言により真正に成立したものと認められる乙第二九号証の二、同証言によれば、これを認めることができる。
以上によれば、昭和四五年分決算書に計上されなかった売上金額は、別表三(1)の<10>欄記載のとおり年間合計七四五万〇二〇〇円であることが認められる。
(3) 同<3>の事実(昭和四五年分決算書に計上された売上金額)は、当事者間に争いがない。
以上によれば、昭和四五年分売上金額は、別表五(1)の<3>欄記載のとおり四三三三万六九六八円であることが認められる。
(二) 同(2)の事実(売上原価)について
(1) 同<1>の事実(昭和四五年分仮名普通預金出金額)は、前掲乙第一二ないし第一四号証、前掲戸田の証言により真正に成立したものと認められる乙第三〇号証の一、同証言によれば、これを認めることができる。
(2) 同<2>の事実(出金額中、仕入取引に関係がないもの)は、前掲乙第一二ないし第一四号証、第三九号証、前掲戸田の証言により真正に成立したものと認められる乙第三〇号証の二、同証言によれば、これを認めることができる。
以上によれば、昭和四五年分決算書に計上されなかった仕入金額は、別表四(1)の<10>欄記載のとおり年間合計七一〇万七一二五 であることが認められる。
(3) 同<3>の事実(昭和四五年分決算書に計上された仕入金額)は、当事者間に争いがない。
以上によれば、昭和四五年分仕入金額は、別表五(1)の<6>欄記載のとおり一七七〇万三〇四二円であることが認められる。
(4) 同<4>の事実(昭和四五年分期首及び期末商品たな卸高)は、当事者間に争いがない。
以上によれば、昭和四五年分売上原価は、次のとおり一七五五万一二七一円であることが認められる。
期首商品たな卸商+仕入金額-期末商品たな卸高
=258,900+17,703,042-410,671=17,551,271
(三) 同(3)の事実(経費)について
(1) 同<1>の事実(昭和四五年分決算書に計上された経費額)は当事者間に争いがない。
(2) 同<2>の事実(減価償却費不足額)は、前掲乙第一号証、戸田の証言により真正に成立したものと認められる乙第四号証、同証言によれば、これを認めることができる。
(3) 同<3>の事実(事業専従者控除)は、前掲乙第一号証、戸田の証言によれば、これを認めることができる。
以上によれば、昭和四五年分の経費は、次のとおり一八三四万七四七四円であることが認められる。
17,891,550+5,924+450,000=18,347,474
以上の結果、原告の昭和四五年分事業所得は、次のとおり七四三万八二二三円であることが認められる。
売上金額-(売上原価+経費)
=43,336,968-(17,551,271+18,347,474)=7,438,223
2 同(二)の事実(昭和四六年分事業所得の推計額)について
(一) 同(1)の事実(売上金額)について
(1) 同<1>の事実(昭和四六年分仮名普通預金入金額)は、前掲乙第一四ないし第一六号証、前掲戸田の証言により真正に成立したものと認められる乙第三一号証の一、同証言によれば、これを認めることができる。
(2) 同<2>の事実(入金額中、営業収入金に関係がないもの)は、前掲乙第一四ないし第一六号証、第三九号証、前掲戸田の証言により真正に成立したものと認められる乙第三一号証の二、同証言によれば、これを認めることができる。
以上によれば、昭和四六年分決算書に計上されなかった売上金額は、別表三(2)の<10>欄記載のとおり年間合計九五六万五〇〇〇円であることが認められる。
(3) 同<3>の事実(昭和四六年分決算書に計上された売上金額)は、当事者間に争いがない。
以上によれば、昭和四六年分売上金額は、別表五(2)の<3>欄記載のとおり五二八五万〇三四七円であることが認められる。
(二) 同(2)の事実(売上原価)について
(1) 同<1>の事実(昭和四六年分仮名普通預金出金額)は、前強乙第一四ないし第一六号証、前掲戸田の証言により真正に成立したものと認められる乙第三二号証の一、同証言によれば、これを認めることができる。
(2) 同<2>の事実(出金額中、仕入取引に関係がないもの)は、前掲乙第一四ないし第一六号証、第三九号証、前掲戸田の証言により真正に成立したものと認められる乙第三二号証の二、同証言によれば、これを認めることができる。
以上によれば、昭和四六年分決算書に計上されなかった仕入金額は、別表四(2)の<10>欄記載のとおり年間合計三九五万八三八三円であることが認められる。
(3) 同<3>の事実(昭和四六年分決算書に計上された仕入金額)は、当事者間に争いがない。
以上によれば、昭和四六年分仕入金額は、別表五(2)の<6>欄記載のとおり二二二五万一九七四円であることが認められる。
(4) 同<4>の事実(昭和四六年分期首及び期末商品たな卸高)は、当事者間に争いがない。
以上によれば、昭和四六年分売上原価は、次のとおり二二三三万五〇二七円であることが認められる。
期首商品たな卸高+仕入金額-期末商品たな卸高
=410,671+22,251,974-327,618=22,335,027
(三) 同(3)の事実(経費)について
(1) 同<1>の事実(昭和四六年分修正決算書に計上された経費額)は、当事者間に争いがない。
(2) 同<2>の事実(事業専従者控除)は、前掲乙第二号証、戸田の証言によれば、これを認めることができる。
以上によれば、昭和四六年分の経費は、次のとおり二二三五万六八一五円である。
22,191,815+165,000=22,356,815
以上の結果、原告の昭和四六年分事業所得は、次のとおり八一五万八五〇五円であることが認められる。
売上金額-(売上原価+経費)
=52,850,347-(22,335,027+22,356,815)=8,158,505
3 同(三)の事実(昭和四七年分事業所得の推計額)について
(一) 同(1)の事実(売上金額)について
(1) 同<1>の事実(昭和四七年分仮名普通預金入金額)は、前掲乙第一六ないし第一八号証、前掲戸田の証言により真正に成立したものと認められる乙第三三号証の一、同証言によれば、これを認めることができる。
(2) 同<2>の事実(入金額中、営業収入金に関係がないもの)は、前掲乙第一六ないし第一八号証、前掲戸田の証言により真正に成立したものと認められる乙第三三号証の二、同証言によれば、これを認めることができる。
以上によれば、昭和四七年分決算書に計上されなかった売上金額は、別表三(3)の<10>欄記載のとおり年間合計一〇七四万二〇〇〇円であることが認められる。
(3) 同<3>の事実(昭和四七年分決算書に計上された売上金額)は、当事者間に争いがない。
以上によれば、昭和四七年分売上金額は、別表五(3)の<3>欄記載のとおり五五一四万六五〇一円であることが認められる。
(二) 同(2)の事実(売上原価)について
(1) 同<1>の事実(昭和四七年分仮名普通預金出金額)は、前掲乙第一六ないし第一八号証、前掲戸田の証言により真正に成立したものと認められる乙第三四号証の一、同証言によれば、これを認めることができる。
(2) 同<2>の事実(出金額中、仕入取引に関係がないもの)は、前掲乙第一六ないし第一八号証、第三九号証、前掲戸田の証言により真正に成立したものと認められる乙第三四号証の二、同証言によれば、これを認めることができる。
以上によれば、昭和四七年分決算書に計上されなかった仕入金額は、別表四(3)の<10>欄記載のとおり年間合計四四六万五〇〇〇円であることが認められる。
(3) 同<3>の事実(昭和四七年分決算書に計上された仕入金額)は、当事者間に争いがない。
以上によれば、昭和四七年分仕入金額は別表五(3)の<6>欄記載のとおり二二六二万〇五〇五円であることが認められる。
(4) 同<4>の事実(昭和四七年分期首及び期末商品たな卸高)は、当事者間に争いがない。
以上によれば、昭和四七年分売上原価は、次のとおり二二五八万四七八〇円であることが認められる。
期首商品たな卸高+仕入金額-期末商品たな卸高
=327,618+22,620,505-363,434=22,584,780
(三) 同(3)の事実(経費)について
(1) 同<1>の事実(昭和四七年分決算書に計上された経費額)は、当事者間に争いがない。
(2) 同<2>の事実(減価償却費超過及び不足額)は、前掲乙第三号証、前掲戸田の証言により真正に成立したものと認められる乙第五号証、同証言によれば、これを認めることができる。
(3) 同<3>の事実(事業専従者控除)は、前掲乙第三号証、戸田の証言によれば、これを認めることができる。
以上によれば、昭和四七年分の経費は、次のとおり二三〇七万二九四五円である。
22,866,580-11,350+5,050+42,660+170,000=23,072,945
以上の結果、原告の昭和四七年分事業所得は、次のとおり九四八万八七七六円であることが認められる。
売上金額-(売上原価+経費)
=55,146,501-(22,584,780+23,072,945)=9,488,776
以上認定したところによれば、本件更正処分によって認定された各年分の事業所得金額は、いずれも正当としてこれを是認することができるから、これを前提に別表一(課税処分表)に従ってなされた本件更正処分は適法であって、取消されるべき筋合ではないというべきである。
四 更に、抗弁3(本件賦課処分の適法性)について判断するに前記認定に係る本件仮名預金の開設及び売上金の入金状況に前掲原告本人尋問の結果を併せ考えれば、同(一)の事実(更正により納付すべき税額のうち正当な理由に基づかないもの)及び同(二)の事実(右税額部分のうち隠ぺいに係るもの)を認めることができ 以上の事実によれば、別表七(加算税計算表)に従ってなされた本件賦課処分は適法であって、取消されるべき筋合ではないというべきである。
五 そこで、再抗弁(国税の更正、決定等の期間制限)について判断するに、前記認定の経緯に照らせば、本件更正処分及び賦課処分は、偽りによりその一部の税額を免れた所得税についてなされたものであるということができるから、国税通則法第七〇条第二項第四号により、その更正又は賦課決定の許される期間は、それぞれ国税の法定申告期限又は申告書の提出期限から五年間であり、従って、その期間内になされた本件更正処分及び賦課処分は適法である。
六 以上の次第で、原告の本訴各請求はいずれも理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 篠原曜彦 裁判官 水上敏 裁判官 遠藤和正)
別表一 課税処分表
(1) 四五年分
<省略>
(2) 四六年分
<省略>
(3) 四七年分
<省略>
別表二 事業外収入表
(1) 原告の事業収入以外の収入
<省略>
(2) 原告の妻敏子の収入
<省略>
別表三 仮名普通預金入金表
(1) 昭和45年分
<省略>
(2) 昭和46年分
<省略>
(3) 昭和47年分
<省略>
別表四 仮名普通預金出金表
(1) 昭和45年分
<省略>
(2) 昭和46年分
<省略>
(3) 昭和47年分
<省略>
別表五 被告主張の月末在庫高計算表(単位-円)
(1) 昭和45年分
<省略>
(2) 昭和46年分
<省略>
(3) 昭和47年分
<省略>
別表六 原告主張の月末在庫高計算表(単位-円)
(1) 昭和45年分
<省略>
(2) 昭和46年度
<省略>
(3) 昭和47年分
<省略>
別表七 加算税計算表
<省略>
(注) 端数の切捨計算は国税通則法第一一八条、第一一九条によるものである。